ma cherie *マシェリ*
そして合コン当日を迎えた。


もう初夏を感じさせる爽やかな季節。

今日も空は雲ひとつなく澄み渡っているのに、オレの心はあの日以来どんよりと曇ったままだった。

王子とサキの関係が気になってしょうがないのだ。

本音を言えば、合コンなんて行く気分にはなれなかった。



早上がりでバイトを終えたオレ達は早々に着替えを済ませた。

事務所から外に出ようとドアを開けると、オレ達とは逆に中に入ってこようとしているサキに出くわした。


「あ。お疲れ様です」


サキはペコリと頭を下げる。


「今日は二人とも早いんですね」


「そうやねん!」


望月がわざとらしいぐらいのテンションの高い声を上げる。


「今からオレら、合コンやねん」


サキはどんな反応を見せるだろう。

オレはゴクリと唾をのんで彼女の様子を窺った。

望月が言うように、本当にオレのことを好きなら多少なりとも動揺を見せるだろうか。


ところがそんなオレの期待はもろくも崩れさった。


サキは顔色一つ変えずにニッコリと微笑む。


「そっか。楽しんできてくださいね」



が―――ん。

そんな効果音が頭の中で反響したのは気のせいだろうか。

ちょっと古臭い漫画だったら、今オレの顔には縦線が入り、頭には1トンぐらいの石が乗っかってっぞ。



「お疲れ様でしたぁ」


オレの横を通り過ぎて、事務所内に入っていきそうになったサキ。

気づけばオレは、無意識のうちにサキの手首を掴んでいた。



うわっ……。

何やってんの、オレ……?


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