ma cherie *マシェリ*
サキはそう言うと、目を伏せた。

その表情はすごく悲しそうで、気のせいかもしれないけど、ほんの少し目が潤んでいるようにも見えた。

ひょっとしてオレは彼女を傷つけてしまったんだろうか……そんな気がした。


いや、ちょっと待て。


このサキの反応。

これはひょっとして……



ひょっとするとヤキモチ妬いてんじゃねぇか?


そうか。

さすがのサキもオレが他の女の子と一晩過ごしたとなると、嫉妬を抑えられないってわけだな。


“効果絶大”

そんな望月の言葉がオレの頭に浮かんだ。

やばっ……。

ちょっとうれしくて、緩みそうになった口元を慌てて手で覆った。


「マヒロさん! ちゃんと反省してくださいっ」


「へ? あ、ああっ……。悪ぃ……」


そうは言ってもやっぱりニヤける。


そんなオレをしみじみ眺めながらサキがポツンと呟いた。


「だから言ったのに……」


「は?」


んんん?

ちょっと待て。

このパターンは……。

また話がとんでもない方向へ向かおうとしているんじゃないだろうか。

こういうパターンは今まで何度も味わってるぞ?

嫌な予感に包まれたオレの背筋を冷や汗が伝う。


「サキ……?」


サキはキッとオレを睨んで訴える。


「だから言ったじゃないですか!」 
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