ma cherie *マシェリ*
望月の提案により、オレ達は、イタリアンレストランに行った。

イタリアンといっても本格的な料理が食べられるようなかしこまった店じゃない。

学食みたいにセルフサービスになっていて、パスタやピザはもちろんのこと前菜からメイン料理まで自分で好きなものを選んでトレーに乗せて、その場で会計を済ませるのだ。

値段も安いし、学生のオレらにとっては気軽に入りやすい店。


腹が減ってんだかなんだかよくわからないオレはペペロンチーノとサラダをチョイスした。


とりあえず口に運んでみるものの、ろくに味わいもせず、ただ機械的に胃袋へ流し込んでいく。


望月もさっきから別な意味で不満があるようだった。


「男二人で食事って、なんか寂しくない?」


「誰か呼ぼうかなぁ……」なんて携帯片手にブツブツ言ってる。

ヤツは誰かとメールでもしているのか、この店に入ってからずっと携帯をカチカチといじっている。


「あ! この前の合コンの子らでも呼ぶ?」


「う”……」

望月のそのセリフにオレは口に含んでいたパスタを喉に詰まらせそうになった。


「それはやめろ」


「あはは。やっぱまずいか」


こいつ……絶対わかって言ってやがる。

オレがあの日、女の部屋で一晩過ごしたことわかってて、わざと言ってるんだ。


オレは恨めし気に望月を睨んだ。


一方ヤツはそんな視線に構いもせず、窓の外をじっと見つめていた。


「あ……やっぱり」


「え?」


「あれ、サキちゃんちゃう?」
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