ma cherie *マシェリ*
「うわぁ……タイミング悪っ」


いつの間に店から出てきていたのか、背後から望月の声がした。


望月は傘の中に入ってくると、オレの背中をポンと押した。


「行くで」


「は?」


行くってどこに?

オレが疑問を問いただす間もなく、望月が言葉を続ける。


「後、つけんねんて」


「なんで?」


「だから。もう確かめてみたらええやん。サキちゃんとアイツがどんな関係なんか」


「はぁ? 趣味悪すぎだろ……後つけるなんて……」


「へぇ……気にならへんの?」 


オレはふっとため息を吐き出した。


「気になるとか気にならないの問題じゃなくて。オレがどうこういうことじゃねぇよ。こういうことはサキが決めることだろ」


「ふーん……。ほんじゃ、オレ一人で行こうっと。ちなみにあっちはホテル街やで?」


望月は二人が去って行った方向を指して、オレを挑発する。

くそぉ……絶対面白がってやがる。

そんな挑発乗ってたまるか!







その数十分後。

スポーツ新聞で顔を隠しながら電車に揺られるオレがいた。

断言する。

今、オレ史上最悪にかっこ悪い。
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