ma cherie *マシェリ*
駅についても相変わらず雨は降っていた。


肩を寄せ合い、相合傘をしているサキと王子。




その時突然、オレの服を望月が引っ張った。


「うわっ」


前を歩く王子がこちらを振り返ったからだ。


オレ達は慌てて、電柱の陰に身を潜めた。



「どうしたの?」


サキの声がする。


「うん……。なんか誰かがつけているような気がしたんだ」


これは王子の声?


――やっべ……。

とうとう気づかれたか?




「にゃあああああ」


その時、望月がヘッタクソな猫の鳴きまねをした。


(アホか!)


オレは声に出さずに口をパクパクさせて、望月の頭をビシビシと叩いた。

こんな子供だましなモノマネに騙されるわけねぇだろっ。

ああ、もう絶体絶命のピンチ……。




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