ma cherie *マシェリ*
オレの心臓はもう破裂寸前ってぐらい大暴れしている。


息を潜めてじっとしていると、サキの声が耳に届いた。


「なんだ。猫かぁ……」


って、騙されてるしっ!!

そうだった。

サキだった。


オレはうんうんと妙に納得してしまった。

一方望月は、笑いを堪えるのがもう耐えられないって感じで、もごもご言いながら必死で口元を押さえていた。


「盛ってるね……発情期かな?」


王子がクスクス笑っている。

――悪かったな、年中発情してて。


オレはそっと電柱から顔を覗かせた。


――まただ。

一瞬目があったような気がした。


彼はまるでオレへ見せつけるかのように、サキの肩に腕を回した。


「行こ」


そう言うと、また一瞬だけこちらを振り返った。

ニヤリと微笑んで。


――アイツ。


絶対気づいてる。

オレ達の存在に気づいていながらわざと、ああやってるんだ。

いったい何のために?




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