ma cherie *マシェリ*
うっ……。

まだ何も言ってないのに、謝んなっつの。

余計傷つくだろぉ。


「あたし……マヒロさんの気持ち、全然気づいてなくて……」


「おせーよ……」


オレはポツリと呟いた。

今更気づかれても、もう遅いんだよ……。


「ですよね。わたしってばほんと気が効かなくて……」


「は? 気が効く……って?」


このパターンはまたもや……。

嫌な予感がしてブルッと身震いするオレの目の前で、サキがいかにも申し訳なさそうに、顔の前で両手を合わせる。


「すみませんっ。お茶も入れてなくてっ!」


「へ? お……お茶?」


ガクンってコントみたいにずっこけるオレ。


「今、コーヒー切らしてるんですよぉ。あ! ちょっと買ってきますね!」


言うなりサキはスクっと立ち上がると、鞄を手に取る。


「いやっ。別にいいって! てか、お気遣いなく……。いや、むしろ行くなっつの! オレ……アイちゃんと二人……」


――パタンッ


って玄関のドアが閉められる音だけがやけに響いた。


「……っきりで、どうすんだよ?」



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