ma cherie *マシェリ*
オレの目の前で、アイちゃんはしばらく肩を揺らせてクスクス笑っていたが、その笑い声がだんだん大きくなって、ついにはお腹を抱えて爆笑しだした。


「大変だね……。マヒロ君」


涙までうっすら浮かべて、目じりを拭っている。


「サキって、かなり天然でしょ? 同情するよ」


「そりゃ、どーも」


オレは無愛想に応えた。


「サキって昔っから、ずっとああなんだよ。すっとぼけたことばっかすんの」


「昔……?」


「うん。オレとサキって幼馴染なの」


「幼馴染?」


「そ、親同士が仲良くてね。それこそ赤ん坊の頃から兄妹みたいに育ったんだ」


なるほどね……。

よく聞くよな、兄妹みたいな関係って。

だけど、結局は他人だろ?

同じ部屋で過ごしてて、男と女の関係に発展しないなんてことあんのかな?


そんなオレの疑問に気づいたのか、アイちゃんが話し始めた。


「あっ……ちなみに、マヒロ君が心配してるような関係じゃないよ? オレら」


「ふーん……」


「だってオレ……女に興味ないもん」


「ふーん……」


って、ええ?

今サラリと言ってくれちゃったが、すっごい発言だったんじゃないか?

すぐに言葉には出せなかったが、今オレ、すんごい驚いた顔してると思う。


そんなオレにアイちゃんはニッコリ微笑んだ。


「オレ、ゲイだし」
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