ma cherie *マシェリ*
「うん。そのうち、毎日のように嫌がらせメールが届くようになったんだ」


ああ……。

そういうことか。


「アドレス変えたら解決するだろうって思ってた。けど……違ったんだ。裏サイトってあるでしょ? 掲示板であることないこと……いっぱい書かれてたよ。」


「そっか……怖かっただろうな」


顔の見えないヤツらが、平然と自分の悪口を言う、しかも相手が見ていることも、当然わかった上でだ。

書かれていることを否定したくても、誰に何を言えばいいかわからない状況なんだろう。


「一番キツかったのはさ、その中に……オレが親友だと思ってたヤツらしか知らない情報まで書かれていたことだったんだ」


「えっ……」


「もちろん、そいつらが直接書いたわけじゃなかったかもしれない。けどさ、仲間だと思ってたからこそ話したことってあるでしょ? もう誰を信じたらいいかわかんなくなってきて……それからは、自分から殻に閉じこもるようになった。親の手前、ガッコには行ってたけど、誰とも話さなかったし、ただ授業が終わるのを息をひそめてじっと待ってるって毎日だった」


オレは急にハッとして尋ねた。


「サキは……?」


さっきからサキの名前が出てこない。

いったいサキはその時、どんな反応を示したのだろう。



「サキも離れていったよ。口きいてくれなくなったし、目も合わせてくれなかった……」


「えっ……サキが?」
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