ma cherie *マシェリ*
「うん。けど、サキが離れていった理由は、他のヤツらとは違ったんだ」


「違う……って? どういうこと?」


「その先輩……オレの付き合ってた人って……実はサキの初恋の相手だったんだ」


「え……」


思わず声を上げて驚くオレに、アイちゃんは小さく頷いて話しを続けた。


「サキは入学してからずっと彼に憧れてたんだ。放課後もバスケ部の練習見学したりしてね……。オレよくつき合わされてた。そん時のサキ、すごく可愛くてさ。彼のために差し入れのクッキー焼いたり、ちょっと目が合うだけでキャーキャー言って喜んでた」


オレの知らない高校時代のサキを垣間見た気がした。

その時の様子がなんとなく想像できて、思わず口元が緩む。


「そんな風にサキの恋を近くで見てるうちに……いつの間にか、オレも彼に惹かれてたんだと思う。
サキからしたらさ。親友に好きな人を奪われた感覚だったんじゃないかな? 応援してくれてると思ってたオレに裏切られて……その上その幼馴染も好きなヤツもゲイだってわかってさ。失恋したと同時に色々傷ついたと思う……。ダブルどころかトリプルでショックって感じだったんじゃない?」


「たしかになぁ……」


それは相当ショックかもな。

オレだったら一生トラウマになるかも……。


「で、サキからもずっと避けられてたんだけどさ。ある時、昼休みに、サキがオレのクラスにやってきたんだ。オレ、その頃、教室にいるのが嫌で、弁当はいつも非常階段で一人で食べてたんだ。いつものようにそうしようと弁当手にしたら、目の前にサキが立ってんの。すげー怖い顔して」
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