ma cherie *マシェリ*
オレはポツリと呟いていた。

同じ立場だったとして、オレにそんなことが出来たかな?


「うん。オレも驚いた。サキってさ、3月生まれでしょ?」


「ああ」


「オレは4月なんだ。だからほぼ一年違うからさ、オレは勝手に兄貴気取りだったんだよね。鈍くさくて頼りないサキを守ってやらなきゃ……っていつもそう思ってた。だからまさかサキに守ってもらうなんて想像もしてなかったんだ」


「なんかわかる気がする。サキって、仕事でも時々そういう面見せるっつか。普段はボケっとしてるくせにさ。ヤケにしっかりテキパキしてるとこもあるんだ、アイツ」


「だろうね。実は……大阪に来たのもサキに誘われたからなんだ」


「え?」


「親との関係は相変わらずぎこちなかったからさ、卒業したら家を出るつもりだった。家どころか……どこか遠くへ行きたかったんだ。とにかくあの町を出たかった。でも、将来の目標も行くあてもなくて……。そんな時、サキに言われたんだ。『卒業したら一緒に大阪行こう?』って。『あたし一人だと不安だから、アイちゃんも一緒に住んでくれたら心強い』ってね」


なるほどね……。

二人が一緒に住むようになったのは、そんな経緯があったんだ。


「一人だと不安だ……なんて言ってたけど、ホントは逆だよ。サキはオレのこと心配してたんだよ。一人であてもなく地元を離れようとしてるオレを心配して……それで誘ってくれたんだと思う。サキにはホント感謝してる」


「そっか……」


なんかわかんねぇけど、胸の奥が熱くなった気がした。

サキはそういうヤツだよなって思う。

きっと幼馴染の彼を放っておけなかったんだろう。


それにしても……。


「あのさ……」


ポツリと呟くオレにアイちゃんが「ん?」とこちらを見た。

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