ma cherie *マシェリ*
未だかつて経験したことのない状況に、オレの思考は完全に停止してしまった。


アイちゃんは上からオレの顔を覗き込む。

その顔はゾッとするほど妖艶だ。


「オレさ……。実はマシェリに行くの、いつも楽しみにしてたんだ。マヒロ君に会えるかなってね」


はぁああああ?

なんだそれ?

まさかの新事実発覚?

アイちゃんがマシェリに来ていた目的って、サキ狙いじゃなくて……。


実は狙われてたのはオレ?


って、呆気に取られてる場合じゃねっつの。


「いやっ。これはまずいっしょ」


オレはアイちゃんの体の下で身をよじってみる。

だけど完全に組み敷かれててビクともしない。

女みてぇに細いのに、何なんだ……この力は。


アイちゃんはそんなオレの様子にクスクス笑ってる。


「逃げようとしても無駄だよ? オレ、子供の頃から柔道やってたんだ。得意技はね。ネ・ワ・ザ」



なるほど……寝技か。

って、感心してる場合じゃなくて!


アイちゃんはそのキレイな顔をどんどん近づけてくる。

美形って間近で見るとド迫力だな。

肌なんてそのへんの女の子よりも白くてスベスベしてそう。

そんな瞳で見んなっつの!

潤んだ大きな目に見つめられて吸い込まれそうになりクラクラしてきた。

ヤバい……。

こうなったら……いっぺんぐらい試してみるか。
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