ma cherie *マシェリ*
まるで内緒話でもしようとしているかのようだ。


ちなみに、今はユマのお母さんもいないし、お客はあたしだけなので、この店にはあたし達二人しかいないのだけど。



至近距離でじっとあたしの目を覗きこむユマ。



「もう……シタの?」


「ブッ……ゴホッ」


思わず飲んでいたピーチソーダを吹き出しそうになってむせた。



「なっ、何、急に……っていうか、何その質問」


「いやぁ。今、次回作の構想練ってるんだけどさー。テーマを“初H”にするつもりなんだー」


「はぁ……」


「だから、サキの体験談をぜひに……! と思って」


「はぁ、なるほどね。って、な、なんであたし?
人の話しを勝手に漫画にしないでよ! そんなの自分の体験を描けばいいじゃん」


「ん――?
まぁ、そうなんだけど。
自分の経験だけだと、なんか頼りないっていうかさ。
自分はこうだったけど、ひょっとして少数派? 他の人はどうなの?……みたいなのあんじゃーん」


ユマは手にしていたグラスを食器棚に片づけながら、「それに……」と言葉を続けた。


「あたし、そういうの早かったじゃない?」

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