ma cherie *マシェリ*



――――――――
――――……


電話に出たアイちゃんはちょっと不機嫌そうだった。



《もしもし? マヒロ君? オレだけど?》


「……その声、アイちゃん? サキは?」


《サキ、携帯忘れて出てっちゃったみたいだよ。
てか、さっきから何度もかけてこられて、うるさいんだけど》


「……」


《もう、切るね。オレも今日の夕方から出かけるんだ。
あ、そうだ。サキに伝えてよ?》


「何を?」


《急に旅行行くことになってさ。沖縄まで。しばらく帰らないから……って伝言お願い》


「って、オレだって伝えようがないじゃん。あいつ、携帯忘れてるし」


《あ、そっか》



しばらく考え込むアイちゃん。



《じゃさ。今から携帯取りにきてよ?》


「はぁ?」


《サキも今頃困ってるだろうしさ。これ、サキの実家まで届けてよ?》


「何だよ? パシらせる気かよ?」


《あはは。そんなつもりはないけど。
ま、とにかく取りに来てよ。オレも準備で忙しいから、なるべく急いでね》



そこで電話は切られた。

< 197 / 278 >

この作品をシェア

pagetop