ma cherie *マシェリ*



―――……
――――――――



「それで届けてくれたんですか?」


「ああ」


相変わらず背を向けたままのマヒロさん。


「アイちゃんからお前の実家聞いて……。
家に向かう途中、あの店の前を通ったんだ。そしたら誰かさんが、カウンターにつっぷしてる後姿が見えて」


「はは……み、見られてたかぁ」


つい笑ってごまかしてしまう。


いつから見てたんだろう……。

まさか話してた内容までは聞かれてないと思うけど。



「とにかく、そういうことだから」


チラリとあたしの方を見たマヒロさんは、また背を向ける。


「じゃ、オレ帰るわ」



「え?
帰るって……もう?」


「ああ。携帯届けにきただけだし」


「ええっ……ホントにそれだけのためにわざわざ……?」
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