ma cherie *マシェリ*
あたし達は手をつないで駅までの道を歩いていた。


「ここの児童館でよくアイちゃんと一緒に遊んだんだ。
あ! あそこの駄菓子屋さんのカキ氷、種類がいっぱいあって、いつも迷うんだー。
その先の酒屋さんは友達の家で……」



見慣れた町並み。

子供の頃から、数え切れないぐらい何度もここを通った。




大阪とは違う風景。


山があって、果樹園が広がっていて。


空が広くて。



ここがあたしの育った町。

マヒロさんがここにいることが、なんだか不思議。




「良いとこだな」


「うん。やっぱり帰ってきたら、ホッとする」


「ここで育つとサキみたいのが出来上がるのか……」



マヒロさんはなんだか楽しそうに、独り言を言うみたいに呟いていた。




駅が近づくにつれ、あたしの足は重くなる。



「マヒロさん」


「ん?」


「ホントに、もう帰っちゃうの?」


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