ma cherie *マシェリ*
「阿久津(アクツ)です。サキさんとは職場でご一緒させてもらってます」
あたしとは正反対。
マヒロさんの態度は落ち着いたものだった。
なんだかさわやかに微笑んでるし。
なによー。
いつものオレ様キャラとは別人みたい。
「そうなのー。 じゃ、大阪からわざわざ?」
「ええ……まぁ」
マヒロさんは、お母さんの手前、あたしの忘れ物を届けに来たとは言えないのか、
笑いそうになるのを堪えているような表情をしている。
「サキがいつもお世話になってますー。ご迷惑かけてないかしら?」
「迷惑は色々と……」
あたしの方をチラリと見てわざと呆れ顔をするマヒロさん。
その様子にウケたのか、お母さんはケラケラ楽しそうに笑う。
「でしょー? ほんと、親が言うのもなんだけど、色々抜け落ちた、残念な子でねー」
「お母さんっ!」
自分の娘について、なんてこと言うんだ!
そう思ったとき、後ろからやってきていた車にクラクションを鳴らされた。
後ろに向けて、ペコリと頭を下げたお母さんは、あたし達を手招きする。
「早く、乗って乗って!」
「えっ?」
「あ、いや。オレもう帰るとこ……」
「もう! こんなとこで話してたら邪魔だから! とにかく乗って!」