ma cherie *マシェリ*
お母さんはマヒロさんに向けてにっこり微笑む。
「マヒロ君、泊まっていくでしょ?
今夜は夏祭りだし。
二人で行ってきなさいよ」
「えっ!」
あたしは慌ててキッチンの方へ行った。
ごぼうのささがきをしているお母さんの横に立って、小声で囁く。
「泊まりはまずいんじゃない?」
「なんで? いいじゃない。せっかく遠くから来てもらったんだから」
「や、でもうちは……ほらっ」
「あの――」
内緒話をしていたつもりだったんだけど、聞こえてたのかな?
振り返ると、キッチンの入り口にマヒロさんが立っていた。