ma cherie *マシェリ*
「はい」


「サキとは職場が一緒だと言っていたが。キミもパティシエなのか?」


「いえ」


マヒロさんはお箸を置いて、まっすぐにお父さんの方を見た。



「今は学生です。
マシェリではアルバイトで働いています。やりたいことは他にありますから」



――やりたいこと?


そういえば、マヒロさんの将来の夢って聞いたことがない。

なんだか大学では難しそうな勉強をしてるみたいだけど。



「やりたいこと?」


お父さんは無表情のままマヒロさんを見つめる。



「それはちゃんと生活していけるようなことなのか?」


「え……?」


「お父さんっ!」


「夢だけで食っていけるほど世の中甘くはない。
やりたいことがあるなんてかっこいいことを言うのは結構だが、自分のエゴに家族を巻き込むようじゃ男としていかがなものかと思う」


「お父さん! やめてよ!」

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