ma cherie *マシェリ*
「あたしね」
「うん」
「お父さんのこと、嫌いなわけじゃないんだ」
「ああ。わかってるよ」
「だけど、難しい人だから。どう接すればいいか時々わかんなくて……」
「うん」
「子供の頃ね……。
あたし、すごいおじいちゃん子だったんだ。
おじいちゃんはお父さんとは正反対の人でね。なんか遊び心満載っていうか……。
そんなおじいちゃんと過ごすのが楽しくて。あたしいつもおじいちゃんの後をついてまわってたの」
「そっか……」
「本当はお父さんともあんな風に仲良くなりたい。
だけど、どうすればいいかわかんなくて。毎年誕生日とか父の日には何か贈ったりしてるんだけど、それを使ってるのを見たことがないんだ……。
あ、ほら、この前Sputnikで買ったポロシャツあるじゃない?」
「ああ」
「あれもまだ着てくれてないみたいなんだよね……」
ハァ……と深いためいきを吐き出した時、お母さんが戻ってきた。
「食べ終わった? サキ、浴衣、着付けてあげる。あなた達、お祭り行くでしょ?」