ma cherie *マシェリ*
そういえば、そうだ。
もう古いし、取り壊してもいいと思うのに。
「お父さん、ちゃんと大事に思ってるのよ。おじいちゃんのこともね……」
しみじみとそういいながら、お母さんはタンスから浴衣を取り出した。
紺地に白や水色の桔梗の花が描かれているシンプルなデザイン。
お母さんが若い頃に着ていたものらしい。
「そういえば、お父さんにプロポーズされた時、これ着てたかも……」
なんてちょっと恥ずかしそうに言ってた。