ma cherie *マシェリ*
「うちはね、金平糖も手作りだったんだよ。金平糖をどうやって作るか知ってるかい?」
「いえ……」
「斜めに傾いた大きななべの中にザラメを入れてね。
なべを回転させながら蜜を少しずつ絡めていくんだ。
何日も何日もかけて、回し続けて……。それは気の遠くなるような作業なんだよ」
「すごいですね……」
「すごいんだ、実際。
だけど、そんなやり方で儲けなんてでると思うかい?
親父はたしかに腕のいい職人だったけど、商才はなかった。
店は赤字続きで……
母が実家の畑を手放したりして、なんとか生活していたんだ。
僕が高校生の時に母が亡くなって……。
その頃から、親父に対して怒りみたいなものがこみ上げてきたんだ。
夢や理想を追うよりも家族を養うのが先なんじゃないかって、そう思うようになった」
お父さん、
おじいちゃんに対して、そんな風に思ってたんだ……。
だからさっきあんなことをマヒロさんに言ったのか。
『夢だけで食っていけるほど世の中甘くはない』って。
お金のことでは、苦労したのかもしれない……。
あたしにはそんなこと全然気づかせなかったけど。
「だから僕は親父とは正反対の生き方をしようと思ったんだ。
毎月確実に決まった給料がもらえるような仕事に就いて、家族を守ろうとね。そう思ったんだよ。
サキにもそういう堅実な人生を歩いてもらいたかった。
大学に進学して、そこそこの企業に就職して、そこでいい人と出会って、結婚して。
贅沢はできなくとも、安定した生活を送ってくれればいいと願っていた。
だけどね……」
「ええ」
「サキは、パティシエになるって言ったんだ」
「いえ……」
「斜めに傾いた大きななべの中にザラメを入れてね。
なべを回転させながら蜜を少しずつ絡めていくんだ。
何日も何日もかけて、回し続けて……。それは気の遠くなるような作業なんだよ」
「すごいですね……」
「すごいんだ、実際。
だけど、そんなやり方で儲けなんてでると思うかい?
親父はたしかに腕のいい職人だったけど、商才はなかった。
店は赤字続きで……
母が実家の畑を手放したりして、なんとか生活していたんだ。
僕が高校生の時に母が亡くなって……。
その頃から、親父に対して怒りみたいなものがこみ上げてきたんだ。
夢や理想を追うよりも家族を養うのが先なんじゃないかって、そう思うようになった」
お父さん、
おじいちゃんに対して、そんな風に思ってたんだ……。
だからさっきあんなことをマヒロさんに言ったのか。
『夢だけで食っていけるほど世の中甘くはない』って。
お金のことでは、苦労したのかもしれない……。
あたしにはそんなこと全然気づかせなかったけど。
「だから僕は親父とは正反対の生き方をしようと思ったんだ。
毎月確実に決まった給料がもらえるような仕事に就いて、家族を守ろうとね。そう思ったんだよ。
サキにもそういう堅実な人生を歩いてもらいたかった。
大学に進学して、そこそこの企業に就職して、そこでいい人と出会って、結婚して。
贅沢はできなくとも、安定した生活を送ってくれればいいと願っていた。
だけどね……」
「ええ」
「サキは、パティシエになるって言ったんだ」