ma cherie *マシェリ*
駐車場に車を停めて、そこから夜店の並ぶ境内に向かう。
小さな町の夏祭りとはいえ、結構な人でにぎわっていた。
「おい。迷子になるなよ」
ちょっと偉そうな口ぶりで、マヒロさんはあたしの手を握った。
「迷子になんてならないよー。うちの地元なんだから」
そう答えると
「どうだか」
って、いつもの意地悪っぽい目をして言う。
「なぁ、なんか食いたいもんある?」
そう尋ねられて考える。
夕食を済ませてきたもんだから、それほどお腹が減っているわけではない。
「うーん。特に……」
と言いかけたところで、マヒロさんの足が止まった。
「いいもん、めっけ」