ma cherie *マシェリ*
楽しそうに言うマヒロさんは、ちょっと遠くを見ているようだ。
背の高いマヒロさんからは何かが見えるんだろうけど、あたしにはさっぱりわからない。
「何見つけたの?」
「んー。内緒」
「えっ? なんで?」
「ちょっとここで待ってろよ」
マヒロさんはあたしを道の端っこに連れていくと、手を放した。
「えっ? 一人で買いに行くの?」
「すげぇ、人多いから。お前連れてったら時間かかりすぎるだろ」
そう言って歩き出す。
だけど、すぐに振り返った。
人差し指をあたしに向けて、まるで子供に言い聞かせるみたいに言う。
「いいか。絶対、ここ動くなよ」
コクンってあたしが頷くのを確認してから、マヒロさんは器用に人ごみをすり抜けてあっという間にいなくなってしまった。
――あんなに急いじゃって……。
いったい何を買いに行ったんだろう……。
その場で待つしかないあたしは、目の前を流れていく人の波をぼんやり眺めていた。
すると、トントンと肩をつつかれる。
「あのー。地元の人ですか?」