ma cherie *マシェリ*
マヒロさんは向かってくる二人をひょいと交わして、あたしの方に近づく。


そして「大丈夫か?」と言って、あたしの腕を取った。



だけど、まだまだ大丈夫な状況なんかじゃなく。


マヒロさんの背後に立つ男が拳を振りかざした。



「マヒロさんっ、後ろ!」


そう叫んだ瞬間、マヒロさんはスッと頭を下げた。


拳はワンボックスカーの壁面に激突。



「いてええええ」


拳を抱えてうずくまる男を見下ろして

また飄々とした口ぶりでマヒロさんは言う。


「だから、オレ、痛いの嫌だっつったじゃん」



残った一人がさらにマヒロさんに向かってくると、それをひょいと避けたマヒロさんは腹部めがけて、おもいっきり膝蹴りを入れた。


そしてあたしの耳元で「走るぞ……」と囁く。


その瞬間、あたしの体は引っ張られていた。
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