ma cherie *マシェリ*
マヒロさんは人ごみにまぎれた方が安全だと判断したのか、境内に入っていく。


どうしてこんなに人が大勢いる中で、こんなに早く走れるんだろう……。

そう不思議に思うぐらい、グングンとスピードを上げていく。



やがて、もう追ってこないと判断したのか足を止めた。




はぁはぁ……って息が切れる。


こんなに一生懸命走ったのは久しぶりだ。



まだ恐怖感が拭えない。

膝がガクガクと震えてる。


あたしは怖くて怖くてたまらないというのに、マヒロさんはなぜかプッと吹き出した。



「あの金髪……髪、ベトベトになってんじゃね?」



さっきの光景を思い出す。


金髪頭の上にイチゴシロップが乗っかっていて……。

金色と赤のコントラストが絶妙だった。


「ぷっ……」


あたしも吹き出す。


二人でしばらくお腹を抱えて笑った。


いつの間にか、恐怖心は薄れていった。


マヒロさんが、怖い出来事をさりげなく笑いに変えてくれたから。



それでも二人とも、もうお祭りを楽しむ気分じゃなくて、あたし達はすぐに帰ることにした。

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