ma cherie *マシェリ*
車に乗り込む。


キーを回してエンジンをかけたマヒロさんは、なぜか車を動かそうとしない。


ハンドルに手を置いたまま、あたしの方をじっと見つめている。


何?

……って声には出さずに首をかしげていると、

マヒロさんの顔が近づいてきた。



キスされるんだ。


そう思って目を閉じる。


だけど、唇が触れる気配はなく。


代わりにガツンっておでこに強い衝撃を受けた。



「痛っ」


どうやらマヒロさんに頭突きをされたらしい。


おでこをさすりながら目を開けると、至近距離でマヒロさんが見つめていた。


すごく真面目な顔して。



「あ……」



きっと怒ってるんだ。
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