ma cherie *マシェリ*
このあたりは障害になるような高い建物もないし、
星の瞬きを打ち消すような人工の灯りも届かない。
昔の人々が見てきた星空がそのまま見える。
「オレ、天の川をこんなにはっきり見たのは初めてだ。すげー」
北の空から南の空へ
ほんとうに空にできた川みたいにつらなる天の川。
ミルキーウェイって名前の通り、紺色の空に乳白色の靄がかったみたい。
だけど、その一粒一粒が星なんだよね……。
もうすっかり目が慣れて、星の明るさだけでもマヒロさんの様子がわかるようになった。
星を指差しながら、子供みたいにはしゃいじゃってる。
「……アルタイルだろ? こっちが、ベガ。それからあれが、デネブか……うっわ。すげー」
「マヒロさんて、星とか詳しいの?」
「まぁ、それなりに。ガキん頃から好きだったな。
夏休みの自由工作でさ、オレ、天体望遠鏡、手作りしたんだぜ?
月のクレーターとか、土星のワッカとか見て、すげー興奮した」
なんだか子供の頃のマヒロさんが想像できちゃう。
きっと今みたいにワクワクした顔で望遠鏡覗いてたんだろうなぁ。
「あ……そういえば……」
あることを思い出したあたしは、マヒロさんのシャツの裾をツンツンとひっぱった。
「ねぇ。マヒロさんの夢って何?」