ma cherie *マシェリ*
「あのなぁ。別にいますぐにってわけじゃねーし。それに一人でやるわけねーし。そもそもロケット本体を組み立てたいってわけじゃなくて、それに関わる仕事がしたいってこと」
「うーん……なんかイメージわくような、わかないような」
あたしは理系分野が苦手だったから、この手の話は壮大すぎてついていけない。
「ん――。
けど、案外身近だったりすんだよ。
例えばさ、
国産ロケットは職人の技術なしでは成り立たない……って知ってた?」
「え? 職人」
「ああ。ロケットなんてさ。最新鋭の技術の集大成みたいなもんじゃん?」
「うん」
「けどさ。案外、手作りの部分もあったりするんだ」
「そうなんだ……」
「ある町工場にさ。金属加工のスゲー技術を持ったおっちゃんがいるんだ。ロケットなんかはさ、目に見えないようなちょっとしたゆがみが命取りになったりするわけ。それはどんな精巧な機械を使ってもどうしても微妙な誤差が出てしまうんだ。それをさ、そのおっちゃんは手や耳を使って100分の3ミリっていう、機械以上の精度で仕上げるんだ」
「100分の3ミリ……?
もちろん目には見えないよね?」
「普通の人間じゃ、触ったってわかんねーよ」
「すごい……」