ma cherie *マシェリ*


降ってきそう……だなんて。

柄にもなくロマンチックなことを言うマヒロさんにホッとして口元が緩む。



「うん。子供の頃、ほんとうに降ってきたらいいのになぁ……って思ってた。
なんかね、雲とか星とか、空にあるものっておいしそうに見えない?」


そう言うと、マヒロさんは

「おいしそうって。その発想、サキらしいな」って楽しそうに笑った。



「なぁ。手、出して?」


いつの間にか、マヒロさんはこちらを見ていた。


「?」


何だろう?


不思議に思いながらもあたしはスッと手のひらを差し出した。


「目、つぶって……」


マヒロさんはデニムの後ろポケットをごそごそ探りながらそう言う。




「何? 何かくれるの?」


あたしはワクワクして目を閉じた。


カサカサとビニールのこすれる音がしたかと思ったら、手のひらに何か小さいものが乗った感触。


あ……わかっちゃった。


「これ……」


そっと目を開けた。

やっぱり。

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