ma cherie *マシェリ*
・いけない夜
家に着いた頃には深夜を回っていた。
お父さんもお母さんももう眠っちゃったのかな。
家の中は物音一つしなかった。
喉が渇いたというマヒロさんと一緒にキッチンに入る。
麦茶を入れてあげたら、ゴクゴクと勢い良く飲み干してしまった。
「じゃ、そろそろ寝よっか。
マヒロさんのお布団は客間に敷いてあるはずだから……」
歩き出そうとしたあたしの腕をマヒロさんが掴んだ。
「さっき、忘れてた」
「え?」
何を?
そう言おうとした瞬間、唇をふさがれた。
「ンー……」
まさか実家でキスされるなんて、ふいうちだぁ。
あたしは目を閉じることもできず、瞼をパチパチと動かす。
慌ててマヒロさんの体を押した。
「マヒロさん、ダメだってば! こんなとこで」