ma cherie *マシェリ*



「あ……」


どうしよう。


はだけかけていた浴衣を慌てて元に戻す。



何をしていたか……なんて、絶対にバレてるよね?



黙ったままこちらに近づいてくるお父さん。


その表情からは何も読み取れない。


気まずい。

気まずすぎるって。



流し台のそばで呆然と突っ立ったままのあたし。

すぐ横にお父さんの腕が伸びてきて体がビクンと震えた。



――キュ


お父さんは蛇口をひねってグラスに水を注いだ。


静かなキッチンにゴクゴクと喉が鳴る音が響く。



「……ハァ……」


水を飲み干し、口元を拭って、一息つく。



きっと怒られる……。


そう思って体を固くした瞬間……
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