ma cherie *マシェリ*
「で。いきなり訪ねてきた理由はそれ?」


マヒロさんの問いかけにあたしは頷いた。

Tシャツとスウェット姿に着替えたマヒロさん。

髪はまだ濡れたままで頭にタオルを被っている。


あれから部屋に通されたあたしは、ローテーブルの前にちょこんと座っている。


マヒロさんはその斜め前に座って、濡れた髪をタオルでゴシゴシと拭いている。


「これ……どういうことですか?」


あたしはマヒロさんに尋ねた。

マヒロさんの気持ちを聞くのがなぜか怖かった。

今から確かめようとしていることを考えると嫌でも緊張してきちゃう。

さっきからまともに顔を見ることさえできないでいる。


「どう……って、そのままの意味にとってもらっていいんだけど」


「やっぱり……そういうことなんですね」


「ああ……ま、そういうこと。オレの気持ちわかってくれた?」


「はい。マヒロさんの気持ちはわかりました」



あたしはチョコの箱を両手に持って、体ごとマヒロさんの方へ向いた。

マヒロさんもじっとあたしの目を見つめる。


あ……ダメだ。

緊張しすぎて涙腺が緩んできた。

目がうるうるしちゃう。


まさかマヒロさんとこんなシチュエーションを迎えることになるなんて……。


「マヒロさん……」


「サキ……」


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