ma cherie *マシェリ*
マヒロさんの手が伸びてきてあたしの髪に触れそうになった。


あたしは震える唇をゆっくりと開いて言葉を紡いだ。



「……どい……じゃないですか」


「へ?」


あとちょっとで髪に触れそうになっていたマヒロさんの手がピクンッとそこで止まった。




「……ひどいじゃないですかあああああ」


あたしの涙のダムはついに決壊した。

ポロポロと雫が零れる。


「ひどい……?」


マヒロさんはわけがわからないといった感じでポカンとしている。

とぼけるつもり?


「これですよ! これ!」


あたしは手にしていたチョコをマヒロさんの目の前に突き出した。



「え……だからそれは……」
「ひどいですよ!」


何か言いかけたマヒロさんの言葉をあたしは遮った。




「返品するなんて!」



「へ……へんぴんんんん?」


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