ma cherie *マシェリ*
マヒロさんは大声で叫んだ。

眉間には深い皺が寄っている。

あたしはそんなマヒロさんを涙目のままキッと睨んだ。


「いらないなら、いらないって言ってくれたらいいじゃないですか! コートのフードの中にこっそり入れるなんて悪質ですよ! まるで嫁いびりする姑みたい! そんな遠まわしな返品しなくったって……いらないなら普通に返してくれたらいいじゃないですか! 迷惑だったんならそう言ってくれたら良かったんですよっ!」


はぁ……はぁ…はぁ…

いっきにまくしたてたあたしの息はあがっていた。


「ちょ……ちょっと待って……」


「何がどうなって、なんでこうなるんだよ……」マヒロさんは俯いて眉間を押さえながらブツブツと呟いている。


しばらくそうやっていたマヒロさんは、パッと顔を上げた。

そしてコホンッと小さく咳払い。


「あの……落ち着いて?」


「ぐす……」


あたしは鼻をすする。



「勘違いしてない? オレ返品したわけじゃないよ?」


「じゃ……何なんですか?……」


「それはつまり……えーと……」


マヒロさんはあたしから目をそらしてテーブルに片肘ついて「すげぇ……なんで、わかんねぇかな……犯罪的に天然だよな……」とまたブツブツ呟いている。


「なんなんですかぁああああ?」


もうわけがわかんないのは、こっちだよ。

はっきり言ってくれたらいいのに!
< 45 / 278 >

この作品をシェア

pagetop