ma cherie *マシェリ*
マヒロさんはふあああああと欠伸をしながら腕を伸ばした。


「そろそろ寝るか」


マヒロさんのそんなセリフにハッとする。


「あ……そですね。すみませんでした。急におじゃましちゃって」


「へ?」


立ち上がろうとするあたしに不思議そうな目を向けるマヒロさん。


「帰んの? 泊まってくんじゃないの?」


「なっ……何言ってんですか! 帰るに決まってるじゃないですか!」



あたしは真っ赤な顔で否定する。


「ふーん……帰るんだ」


「そですよ……」


「どうやって?」


「へ?」


マヒロさんはニヤニヤ笑いながら壁を指差す。

その先にあったのは壁掛け時計。


「え……。うあああああああ」


マヒロさんの部屋にあたしの絶叫が響いた。


一生の不覚……。


全然気づいてなかったよぉ。

まさかもう終電がなくなっている時間だなんて……。

ああ……あたしってやつは……。



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