ma cherie *マシェリ*
電車に揺られること数分。

足元からの暖房に温められてあたしはどんどん眠くなってくる。

時々マヒロさんの肩にもたれかかっている自分に気づいてハッとしては、そのたびに「ごめんなさい」なんて謝ったりしていた。

ふと窓から外を見ると、空が薄い紫色と白っぽいオレンジのグラデーションになっていた。

今日は晴れそうだなぁ……。


なんてぼんやり考えているあたしの意識はやがてどんどん薄れてきた。


ああ……。

またマヒロさんの肩に頭乗せちゃった。

でも、もう動かせないやぁ……。

眠くて体がいうことをきいてくれない。


「サキ……」


ゴトンゴトンと響く電車の音に混じって、マヒロさんの低い声があたしの頭にぼんやりと反響する。


「オレさ……」


その声はあまりにも優しくて……耳に心地良くて……まるで子守唄を聞いているみたいだった。


「お前の事……」


マヒロさん……。

ダメだよ。

そんなに優しく囁いたら、ますます眠くなっちゃうよ……。


「……きだよ……」


マヒロさんの声が次第に遠くなっていき、最後の方はほとんど聞き取ることができなかった。



「……って、もう寝てるしっ!」
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