ma cherie *マシェリ*
冷たくて……温かい。

不思議なキス。



「もういいですか?」


あたしは唇を離すと体を起こした。

マヒロさんの手はもうあたしのマフラーを掴んでいなかったから。


「すげ……」


マヒロさんはぼんやり空を眺めながら呟いていた。


「世界がひっくり返るかと思った……」


「もぉ。何わけのわかんないこと言って……きゃっ」


むくっと起き上がったマヒロさんに腕を掴まれたと思ったら

そのまま引き寄せられて彼の胸の中にあたしはいた。


「……マヒロさ……」




言いかけた言葉は、マヒロさんの唇で遮られた。


「んっ……」


さっきのキスとはまるで違う。


マヒロさんの熱があたしの中にどんどん入り込んでくる。



――ドクンドクン……

心臓が激しく脈打つ。


寒いのに、顔も体も火照り出す。

何これ……。
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