アナタガスキ
「全部開けて好きなの食っていいよ、
りかちゃんチョコ好きだろ」
普段は大好きだけど、
今日限定でチョコは嫌いなの。
「いらない」
「くくっ、そう言うと思った」
笑う彼を振り返って睨む。
「わかっているなら言わないで」
誰かの想いなんて食べられるわけないのに。
「あれ?なに怒ってるの?」
「別に怒ってないし」
「あれれ~もしかして妬いてる?」
「違うから!」
違うんだけど、違わない……
私の気持ちを乱しているのはテーブルの
小さな包み達じゃなくて、その向こう
来て直ぐに見てしまった、玄関の靴箱の上に置かれた少し大きめの宅配便の箱。
あれは私が見ない振りをしなければいけないもの……
ネェ、イツマデコウシテイルノ?
「で?りかちゃんからはないの?」
彼はにっと笑ってタバコを消した。
「あるよ」
わかってたくせに。
今日は絶対に自分から会いに来ない私をわかっていたから、こうして呼びつけたくせに。
「はいっ!」
押し付けるように、トートバックの中から長方形の包みを渡した。