一番星 -惑星ショコラをもう一粒-
先輩は好きでしょう?
「とりあえず、おかえりなさい、先輩」
空港から直接家の前に来てくれた先輩に、あたしはひとまず笑顔を向けた。
「うん、ただいま」
そう言ってふわ、と笑った彼にかすかに胸が高鳴る。
う、久しぶりの生の先輩は威力が……。
ってそんなことに誤魔化されてる場合じゃないんだった。
「今回はちゃんとバレンタイン当日に間に合ったんですね。
よかった、もし間に合わなかったら他の人とお出かけしようかなって思ってたところだったんです」
「えぇっ!」
「先輩があたしの誕生日に帰ってこなかったのが悪いと思います」
誕生日には、十二月二十六日には帰ってきてって、我儘だけど……なにも言わなかった今までよりずっといいと思って口にしたお願いだったんだもん。
あのショックは忘れない。
二十七になる直前を目指したのか知らないけど、ギリギリ過ぎてたよ、あれ。
「ごめんな?」
「……っ!」
ずるい、なぁ。
先輩はいつもいつもずるい。
笑顔ひとつで。
言葉ひとつで。
あたしの機嫌をなおしてしまう。
相変わらずむかつく……。
「今日は来てくれたんで、許してあげます」
きゅうっとスカートの裾をつかんで目を逸らした。
やだもう目を合わせなくても笑っていることがわかる。
「とりあえず、先輩入って下さい。
荷物重いでしょ」
先輩を部屋に通し、パタンと音を立てて扉が閉まった。