監視恋愛

交番に向かって走り出すと美咲さんは手を振り解いて立ち止まった。


「警察は駄目!…写真を撮られてるの」


そう言って美咲さんは自分の肩を抱き締めた。
改めて見ると美咲さんの服はかなりはだけていて、足も裸足のまま。


一先ず公園のベンチに座る。


「助けてくれてありがとう。…でもどうして?」


「あっ。あの、えっと…そ、そう!クロ、クロロと外で会って、それで…」


咄嗟に取り繕う。
一応嘘はついていない。


重い沈黙が流れ、間も無くして美咲さんは視線を落としたまま声を震わせた。


「私ね、ずっと前からストーカーされてたの。でもっその犯人が信頼してた勅使河原(てしがわら)先生だとは思わなくて…」


恐怖と同時にショックもあったと思う。


こういう時、イケメンのリア充なら黙って抱き締めるのだろうが生憎そんな度胸なんて無い。


「無事で良かったです。」


これが僕の精一杯の言葉だった。
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