監視恋愛
そんな決意も虚しく、僕がモタモタしている間に美咲さんが帰宅してきてしまい計画はおじゃんになった。


明日登校するつもりで自宅に帰ってきたのだろう。


クロロの優しく撫で、バッグをベッドに置き、電気を付ける事なく部屋の中央に腰を下ろしテーブルの上にスマホを置く。


ここまで、無言。


一瞬消音状態を疑うほどに静かだけど、音量に問題はない。


いつもと様子が違うが為にうっかり美咲さんを監視してしまったが、もう盗撮盗聴は辞めると決めたんだ。


腹を据えてモニターの電源を切ろうと指先を伸ばした、その時だった。


〝…ねぇ、楽しい?〟


あれっ電話?
違う、スマホはテーブルの上に…


〝…盗撮、してたんだね〟


え…


頭が真っ白になる。
一気に血の気が引いていく。


〝ねぇ、楽しかった?〟


激しく混乱する頭。
美咲さんの声が響くけど、受け入れたくなくて脳が聞き取る事をやめようとしている。


完璧だと思った筈だったのに、一体いつ何処でバレてしまったのか?


〝この声だって聞こえてるんでしょう?〟


頭の中でなんで?どうして?が延々と繰り返された。


ただこれだけは判断出来た。


もう僕に逃げ道はない。
全て終わってしまった…と。
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