監視恋愛
***

来たる、放課後。


3日前に待ち合わせた時とは正反対の気持ちでベンチに腰掛けて美咲さんを待つ。


キリキリする胃痛に耐えていると美咲さんは学生鞄からカメラと盗聴器を取り出しゆっくりと歩み寄り、僕の正面に立ち無言でそれを突き出した。


「すすすす、すいませんでした…!」


深く頭を下げた。
視線を合わせるのがただただ怖い。


警察に突き出される?
最低だって怒られる?
気持ち悪いって軽蔑される?


緊張で吐きそうだ。


強く目を閉じていたら頭上から聞こえた美咲さんの声。


「…陽太君ってさ、ムッツリでしょ。」


えっ?
反射的に目を開けた。


「私で何回抜いたの?」


…へ!?
予想外の質問に頭が付いて行かず。


「えっ?えっ…とー」


6…7回?…いや、8かな。


「…本気で数えなくていいから。」


ピシャリと突き放すような物言いに
僕は返す言葉を失う。


我ながら気持ち悪いったらありゃしない。
部屋覗いて抜いてたんだ。当然っちゃ、当然だが。


今は美咲さんに合わす顔がないと、ひたすらに俯いたまま小声ですみません、と謝罪する事で会話の間を保つ事だけで精一杯。
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