ちょっと黙って心臓
Cace.1:オレンジな教室で
「……ねー、今日の体育ってなんだった?」
くるり、右手に持ったシャープペンシルを回して。あたしは、目の前にいる男に訊ねた。
向かい合わせに、くっつけたふたつの机。その片方にいるもうひとりの日直であるはずのそいつは、手元に広げたマンガから視線を外すことなく「あー?」と言葉を返してくる。
「男子はバスケ、女子はバレーだろ。なに、鈴村出てなかったの?」
「……ちょっと、おなか痛くて。保健室で休んでたの」
「あー、あの日か」
何の躊躇もなくそんなせりふをのたまったもんだから、思わずその頭に消しゴムをぶん投げた。
デリカシー皆無男の「いってぇ!!」という悲痛な叫びと同時に、あたしの消しゴムがぽーんとあらぬ方向に飛んでいく。
「てめぇ鈴村!! 手ぇ早すぎだろ!!」
「うっさいわ馬鹿志摩!! 今あたしの手元にもっと固くて尖ったモノがなかったことをありがたく思うことね!!」
「消しゴムでも十分威力あったわ!!」
もうほとんどオレンジ色に染まった教室に、あたしと志摩の不毛な言い合いが響いた。
ああもう、日直の仕事なんてとっとと終わらせて帰りたいのに。志摩といると、いつもこんな感じで無駄にケンカしてしまう。
……本当は。
コイツの前では、もっとかわいいあたしで、いたいのに。
くるり、右手に持ったシャープペンシルを回して。あたしは、目の前にいる男に訊ねた。
向かい合わせに、くっつけたふたつの机。その片方にいるもうひとりの日直であるはずのそいつは、手元に広げたマンガから視線を外すことなく「あー?」と言葉を返してくる。
「男子はバスケ、女子はバレーだろ。なに、鈴村出てなかったの?」
「……ちょっと、おなか痛くて。保健室で休んでたの」
「あー、あの日か」
何の躊躇もなくそんなせりふをのたまったもんだから、思わずその頭に消しゴムをぶん投げた。
デリカシー皆無男の「いってぇ!!」という悲痛な叫びと同時に、あたしの消しゴムがぽーんとあらぬ方向に飛んでいく。
「てめぇ鈴村!! 手ぇ早すぎだろ!!」
「うっさいわ馬鹿志摩!! 今あたしの手元にもっと固くて尖ったモノがなかったことをありがたく思うことね!!」
「消しゴムでも十分威力あったわ!!」
もうほとんどオレンジ色に染まった教室に、あたしと志摩の不毛な言い合いが響いた。
ああもう、日直の仕事なんてとっとと終わらせて帰りたいのに。志摩といると、いつもこんな感じで無駄にケンカしてしまう。
……本当は。
コイツの前では、もっとかわいいあたしで、いたいのに。
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