ちょっと黙って心臓
「……別に。学校はイジメがうざいし、家は親がうざいから。全部どうでもよくなっただけ」

「えっ、藤倉サンってイジメられてんの? そういうタイプに見えないけど」

「元々イジメられてる子がいて、その子をイジメてた奴らに『くだんないことやってる暇あるなら勉強でもしたら』って言ったら、こっちに飛び火したのよ」

「すげー、カッコイー藤倉サン」



そう言って無邪気に笑う夏川に、若干毒気を抜かれる。

……やっぱり変だわこいつ。普通引くでしょこんな話したら。


なぜかちょっとだけばつの悪い気持ちになりながら、メロンパンにかぶりつく。

すると視界に映ったのは、夏川のド派手な頭。

太陽の光を受けてきらきら輝いているそれは、ワックスか何かで固められているのだろう。触るとちょっと痛そうだ。

ああでも、なんか──。



「……たんぽぽみたい」

「えっ?」



小さく呟いた私の声に、夏川が弾かれたように顔を上げた。

その反応になぜかちょっとだけ恥ずかしくなりながら、「それ、」と頭を指さす。



「あんたの頭。なんか、たんぽぽみた──」

「わかる?!」



私の言葉をさえぎり、ずいっときらきらした表情で迫ってきた夏川に、驚きながらうなずく。

またうれしそうに笑って、夏川は前のめりになっていたからだを起こした。
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