ポケットにキミの手を
「なに? お前も一緒に探してくれるとか?」
「まさか。オーダーメイドだとどんな指輪が出来るのか知りたいなぁって思っているだけです」
「ああそっちか。なんだよ。そういう予定あるの?」
「俺は最初っからその辺り頭に入れて付き合ってますけどね」
そう、俺はね。
今更、結婚も考えられないような人と付き合おうなんて思わないさ。
だけど、菫がどう思っているかは分からない。彼女は俺より4歳年下だし、今は仕事も軌道に乗り始めたところだし。
しれっと言うと、桐山さんは何かを計算するように指を折り始めた。
「でもさ、付き合ってどのくらいだよ。まだ一年もたってないんだろ?」
「そうですね。半年になるかな? そろそろ」
「お前の前の婚約者の時は二年付き合ったって言ってなかったか」
「言いましたね」
悪気なく古傷を抉ってくるな。
桐山さんは悪い人ではないが率直過ぎる。それでも人はみな、そのスポーツ系の爽やかな顔に騙されて気づいていないようだが。
「今度は失敗したくないんだろ? 慎重にいけば?」
「何年付き合っても駄目な相手とは駄目だし、大丈夫な相手とは大丈夫でしょう」
強気で返すと、桐山さんは驚いたように一瞬間を空けたかと思うと、ニヤリと笑った。
「運命の人ってやつか」
「運命……とまでは言いませんけどね」