ポケットにキミの手を


「……押しが強すぎて、ね」


痛いところを突かれたな。
目下、気になっているところがそれだ。

彼女からの愛情は感じる。俺が強気に出ていることも彼女は嫌がっていないだろう。
だけど、結婚まで押してしまっても大丈夫なのか?


『あなたに気に入ってもらえる部分が自分にあるなんて思えない』


以前彼女が告げたその言葉は、密かに俺のトラウマを刺激した。
俺はまた、大切な人の気持ちを置き去りにしたまま、自分の気持ちを押し付けてるんじゃないかって。

菫が思う以上に俺は貪欲で、いつでもいつまでも愛されたい。
だから早く一生を誓う言葉が欲しいと思ってしまう。


付き合って半年、流石に早すぎるか?
それを君に伝えたら、重たいと思われるのか。


考えこむ自分を気恥ずかしく感じて、残ったコーヒーを一気に煽り、俺も喫煙室を後にした。
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