ポケットにキミの手を
「応援?」
「だって。緊張しますもん。勇気がほしいです」
「俺の方が緊張してるよ。菫の親に会うんだから」
「司さんなら大丈夫です。きっとびっくりされちゃう。こんな素敵な人連れてきたら」
「さあどうかな。親父さんあたりに怒鳴られるんじゃないかとハラハラしてるよ」
「あはは。それは無いです」
笑っているのに、どこか寂しそうな彼女の表情が気になる。
俺は左手を伸ばし、彼女の右手を握りしめた。
勇気をあげようとしたのかもらおうとしたのかは半々といったところだ。
高速のサービスエリアで昼食を食べ、この季節はバラや菖蒲が見頃だというフラワーパークを観光する。
体験コーナーというのもあったので菫に勧めてみると、彼女は器用に押し花のストラップを作った。
「菫、上手だね」
「簡単なキットなんです。司さんも出来ますよ」
「いや、俺はこんな小さいの出来ないよ。手先が器用なんだな、きっと」
菫は、嬉しそうにいつまでもそのストラップを見つめている。
俺は飲み物を買いに向かいながら、その姿を遠巻きに眺めた。
思うに菫は褒められなれてないんだよな。
菫は、かけた愛情の分だけ輝くタイプだなと最近思う。今まで彼女が、そういう男に会えなかったというのは不運以外の何物でもないだろう。
まあ俺としては、彼女を花開かせたのが自分だというのが嬉しくて堪らないのだが。
それでも、もっと早く出会えていれば、舞波みたいな男に傷つけられることはなかったのにと思う。