ポケットにキミの手を
*
帰ってきてすぐ、俺は結婚指輪の注文を出した。
「でもまだ、司さんのご両親にご報告してないのに」
菫は伺うように俺を見るけれど、俺はもう待てない。菫を安心させるものを一つでも多く増やしたくて。
「あっちの都合がつかないのが悪いんだろ。もし反対されても結婚するからいいんだ」
「……でも」
「うちの親に、……特に母親になにか言われても絶対気にするなよ。変なプライドの持ち主だから」
念を押すと不安そうな顔をする。
心配になる部分はあるけど、結婚するにはクリアしなければならない問題もある。
「一つ頼みがあるんだけど」
「はい?」
「俺の両親が気に入らなくても、俺のことは嫌いになるなよ?」
菫は目をぱちくりとさせ、その後ふわりと笑った。
「それは絶対ないです」
「本当?」
「神様に誓ってもいいです」
「じゃあ、今日の俺を労ってよ」
そのまま、疲れた体をベッドに横たえて、彼女の首筋にキスを落とす。
「司さん、私汗かいたりしてるからっ」
「別にいいよ」
「明日仕事だし」
「それは俺も一緒。結構緊張したんだから。労ってもらう資格はあると思う」
「それはっ」
そうなんですが。
小さく続けられたつぶやきはやがて吐息へと変わっていく。
緊張の一日の最後を、甘い時間で彩ろう。
【fin.】
帰ってきてすぐ、俺は結婚指輪の注文を出した。
「でもまだ、司さんのご両親にご報告してないのに」
菫は伺うように俺を見るけれど、俺はもう待てない。菫を安心させるものを一つでも多く増やしたくて。
「あっちの都合がつかないのが悪いんだろ。もし反対されても結婚するからいいんだ」
「……でも」
「うちの親に、……特に母親になにか言われても絶対気にするなよ。変なプライドの持ち主だから」
念を押すと不安そうな顔をする。
心配になる部分はあるけど、結婚するにはクリアしなければならない問題もある。
「一つ頼みがあるんだけど」
「はい?」
「俺の両親が気に入らなくても、俺のことは嫌いになるなよ?」
菫は目をぱちくりとさせ、その後ふわりと笑った。
「それは絶対ないです」
「本当?」
「神様に誓ってもいいです」
「じゃあ、今日の俺を労ってよ」
そのまま、疲れた体をベッドに横たえて、彼女の首筋にキスを落とす。
「司さん、私汗かいたりしてるからっ」
「別にいいよ」
「明日仕事だし」
「それは俺も一緒。結構緊張したんだから。労ってもらう資格はあると思う」
「それはっ」
そうなんですが。
小さく続けられたつぶやきはやがて吐息へと変わっていく。
緊張の一日の最後を、甘い時間で彩ろう。
【fin.】