ポケットにキミの手を
司さんのご両親の予定が空いたのは、私の両親への挨拶から二週間後の事だった。
最初にご挨拶の話が出てからで考えると一ヶ月ほど経っていたので、正直反対されているんじゃないかって心配だった。それを告げると司さんは憮然として答える。
「反対というか、俺のことにはあんまり興味がないんだよね。その割に、格式とかには拘るっていうか。ちょっと面倒臭いんだ、うちの親」
いつも優しく笑う司さんが、ご両親の話となると途端に顔を曇らせるので、私はなんだか心配だった。
「前の……方の時は」
不機嫌になるのを承知で聞いてみると、司さんは口元を引きしめて私を見る。
「一緒に食事まではしたかな。婚約してたからね」
「ですよね。もしかして、ご両親がきっかけでお別れとか……」
こんなに優しい司さんと別れるなんて、私には考えられないことだったから純粋に疑問で聞いてみたんだけど、司さんは過剰に反応した。
「そう言うんじゃないよ。きっかけの一因にはなったかもしれないけど違う。それに俺はもう綾乃に対してそういう感情は無いから」
「えっと。……疑っていたわけではなくて」
「菫もうちの親に何言われても気にしないで。俺のいうことだけ信じててよ」
こんなに余裕のない彼は珍しい。
それほどご両親が苦手なのか、嫌な思い出でもあるのか。